今回の作品は、監督にとっていろんな挑戦だったと思う。照明、音、そして編集。いろいろな試みが行われていた。
まず照明には、プロジェクターが使われた。この作品では不穏な雰囲気と時間経過を表すためにテレビを活用している。不安な空気の中で、テレビにはそれとは反対に、笑顔やきれいな景色がゆっくりと移り変わる。そしてそのテレビの絵をそのままプロジェクターで照明として使うことで、ちらちらと移り行くプロジェクターの光が、さらに役者の不安定なイメージをあおることに成功している。
次に音。今回は特にノイズにとても力を入れていたようだった。隣からの音に聞き耳をたてる祐一の邪魔をするかのように、ノイズは全編に引かれつづけている。しかし、このノイズの使い方はむしろ逆の発想からつけられている。それは『無音のインパクト』である。小さいノイズは、作品が進むにつれて聞き慣れて、むしろ耳障りではなくなっていく。そこで、急にあるタイミングでノイズはぴたっと止まる。その時の気分の悪さは何だろう。これは、今までの新井監督に無い技法だ。
そして編集。今回の編集も前回と同様、ノンリニア編集が行われたが、ノンリニア編集を生かしたエフェクトが、とても巧みに使われている。隣からの音を聞いている祐一とその妄想。編集により現実と妄想を不安定に入り混ぜることで、祐一自身の不安な心理をも表現することに成功している。そして、その妄想に、少しづつ観客も飲み込まれていく。
この作品に関わって、さらに新井監督に深い興味を覚えている。 |