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*** アライ手記 ***
   
  1998/01/06 「いつもより、ちょっと高いところ」
 
「いつもより、ちょっと高いところ」は7月18日に完成し、8/23日に公開された。今、手元にアンケートの束があるが、実は自分が予想していた以上にこの作品は好評であった。これはとても意外なことだった。完成に2年もかかってしまい、季節も天気もバラバラで、技術的にも未熟な部分ばかり目立ち、脚本的にも演出的にも自分の甘さが出てしまい、完成したとはいえ、とても人様に見せられるモノではないのではないか?と自分では考えていたのだ。しかし、上映会のアンケートで、多くの方から応援と暖かいメッセージを頂いた。これは本当にうれしい事であり、自分達スタッフはかなりこのアンケートに励まされ、勇気づけられた。だが、観客が自分たちの友人や知り合いばかりだったという事で、肯定の意見が多かったのでは、という気もする。またおしかりや、気になった点の指摘がかなりあったことも事実だ。どちらにしても、これらの意見がこれからの作品作りの糧になり、教科書になるのだと実感した。そして、これらの意見がもう一つの計画を実行する手がかりになったのだが、この計画については後に話す事にする。やはり、映画は人に見せるために作るものである。
 
  1998/01/03 長い沈黙について
 
正月からいきなり恐縮だが、長い間日誌を休載してしまい、本当に申し訳なく思います。前に書いたのが去年の5月だから、8ヵ月も沈黙していたことになりますね。この間何をしていたのかというと、それはズバリ仕事をしていたのです。「いつもより…」は5月のアフレコ作業から始まって、連日連夜の音響作業に入ってしまい、昼間は「本当の仕事」があった関係で、ほとんど日誌を書く暇がなかったのです。7月に映画が完成した後は本業が激化し、なんと9月から12月まで1日も休みがない状態が続いてしまいました。しかし、最近になってようやく仕事も落ち着いてきたようなので、連載も再開するに至ったという訳なのです。毎日とはいきませんが、なるべくタイムリーに次回作の様子なども伝えていきたいと思いますのでよろしくお願いします。しかし、この製作日誌を読んでくれている人はどのくらいいるのだろうか。そもそもこのホームページにアクセスしている人はどのくらいいるのだろうか。どうか、どんどんホームページにアクセスして感想を残していって下さい。こんな情報が欲しい!という意見も待っています。一人でも応援してくれるかぎり、僕達は映像製作を続けていきます。よろしくお願いします!
 
  1998/01/01 明けましておめでとうございます
 


皆さん、お元気ですか?新井澄司です。今年も頑張って映像製作を進めていくつもりです。今年の夏には次回作をお見せできるよう、現在脚本作業を進めています。これからは製作日誌をまめに書きますので、どうぞよろしくお願いします。
 

  1997/04/29 長い!!
 
つながったフィルムを映写機で通して観る。と、何と1時間14分もある。1時間で収まると考えていたが大きな誤算だった。カット毎のタイミング調整で14分もカットできるだろうか?新しく現像があがってきたため、追加するフィルムもある。とにかく今日から再編集を本格的にやらなくては。
 
  1997/04/28 映写機ゲット!!
 
今日、清水の会社の先輩の家に映写機を借りに行く。その人から借りた映写機は太陽系で一番性能が良いといわれる「SD-25」という映写機である。いやいや、探せば何とかなるものだ。これで、5/3からのアフレコに間に合うように編集を終わらせることができる。あと5日だ、がんばろう。それにしても、その先輩の家の大病院のでかさにはまいった。こういう家って本当にあるんだね。
 
  1997/04/27 映画のウソについて
 
映画はウソの固まりである。しかし、そのウソを観ながら客は笑ったり、泣いたりするのだから、説得力のあるウソをつかなければならない。芝居の場合、「ここは森だ!」と叫んでしまえば森になってしまうのだが、映画は全て映像で物語らねば説得力は生まれないのだ。ここで、映像でウソをつくテクニックが必要になる。この映画の大ウソといえば、まず季節である。2年間に渡って春も、夏も、秋も、冬も「夏」を撮り続けた。最初はつながらないと思ったが、つなげてしまえば何とかなるものである。これぞ、映画のマジック!何となく夏に見えるのだが、これは僕の目が慣れてしまったからだろうか?ただし、プールが緑色だったり、見た目にすぐ判るところもあるけれど。もう一つの大ウソは学校である。許可の関係で1ヵ所で撮ることが出来ず、外観を鎌倉、周りの景色を千葉の鴨川、学校の中は茨城の牛久で撮影した。一見自然に見えても、良く見ると窓の形が全然違っていたりする。もし、ウソがばれたらゴメンなさいという感じである。物語的に、もっと大きなウソをつくために、上のような事柄はもっと緻密に撮影するべきだったのだろうが、今回は撮り終えるだけで精一杯だった。だんだん完成に近づき、客に見せる日が近づいていくにしたがって、僕の不安は大きくなっていく。ウソはばれるのだろうか?それともばれずに感情移入してくれるのだろうか?結果が出る日は近い。完成はもうすぐである。
 
  1997/04/25 女の子がいる空気
 
今日は清水、今井と3人で音楽の打ち合わせをする。が、清水が見知らぬ女の子を連れてきたため、一同大いにあせる。誰なんだ!あの子は!?清水は何でもないと言っていたが、本当はどうなんだ?今井と2人で動揺してしまう。しかし、女の子がいるとやっぱり空気が違う。明るい気分で打ち合わせを終了する。 <編集状況> 直井から、5/3〜5/5で役者をキープしたと連絡が入る。これでアフレコ日が決定した。急いで編集を終わらせなくては。
 
  1997/04/23 映写機がない?!
 
ウソのような本当の話しだが、現在の編集室にはなんと、映写機がない。「じゃあ、どうやって画を見ているんだ」と言われそうだが、ビューワーという編集機を使ってカラカラとフィルムを手で回しながらタイミングを見ているのだ。アフレコも近くなっているので何とか映写機を手に入れなくては。 <編集状況> つながった映像を見ながら頭から編集のタイミング調整を始める。結構大変でほとんど進まないまま今日は終了する。
 
  1997/04/22 ブラッド・ピット「デビル」
 
今日は会社の組合の集まりに参加するも、雰囲気に耐えられず始まる前に帰ってきてしまう。途中で友人に会い「デビル」を見てから他の友人も誘い、飲みにいく。「デビル」は周りの評判ほどは悪くなかったが、ブラッド・ピットが「デビル」という程の悪人には見えず、「下宿人」というタイトルの方が良かったのでは?と思ってしまった。 <編集状況> 今日は編集は休み。みんな、スマン!
 
  1997/04/20 役者にルーズソックスをはかせなかった理由
 
この映画「いつもより、ちょっと高いところ」の時代は、いうまでもなく現代である。しかし、この作品に出てくる高校生の女の子達は今はやりの「ルーズソックス」をはいていない。何故だろうか。理由は簡単。僕が「ルーズソックス」を嫌いだからである。あんなだらしない格好を役者にさせる事は、ボクにはどうしても出来なかった。「ルーズソックス」は「パンタロン」と同義であると、ボクは考える。『今』という時代が生んだファッション。「ルーズソックスってかわいい!」と時代に迎合する気はボクにはない。それに、何より大切なのは、この映画が「どの時代の人が見ても自分の高校時代を思い起こさせる映画」である、という事だ。演出的にも、わざと誰が見ても自分自身の思い出にはね返ってくるような作りにしてあるつもりだ。そのためノスタルジックな思いを共有させるためにも普遍的な高校生の姿が必要であった。もし、映画の中の女の子たちが、ルーズソックスをはいて、援助交際の話なんかしていた日には、オジサンどころかボクたちが見ても一気に覚めてしまいますぜ。いつの日か、「パンタロン」と同じように「ルーズソックス」は時代とともに滅びるだろう。その時に、この映画が滅びているかどうか、勝負!である。
 
  1997/04/19 デジタルの波
 
今日は昼頃に起床。本屋に行きビデオ雑誌を買い、コンビニ飯を食べながら読みふける。その雑誌によると、デジタルビデオの編集機が60万円で発売されるらしい。これは事件だ。ビデオ編集機材を揃えようとしたら120万円くらいかかるところが画質の落ちないデジタル編集が出来て60万円とは。これがあれば今までの編集機材が全て無用の長物になり、これからの編集も心配無用となる。ウーム。欲しい。 <編集状況> 夕方頃小川が来て、編集開始。深夜0時までかかってやっとS-100までの全ての編集が終了する。あと、残すは合成シーンの差し込みとタイミング調整のみだ。しかし一つ事件が発生する。R-126とR-127を間違えて合成してしまった事が判明する。今さらリテイクは出来ない。このまま使うか、ウラ技を使うか…。悩みつつ、今日の作業を終える。
 
  1997/04/18 ダークサイド
 
今日、会社の後輩、藤田が編集室に遊びに来る。昔撮った映画や、マニアックなビデオを見ているうちに電車がなくなり、結局彼は泊まることになる。フフフ、君もダークサイドに引き込まれたようだね、藤田君。さあ、編集だ! <編集状況> 藤田を無理矢理手伝わせ、S-95まで終了。あと5シーンだ。明日にも終わらせよう。
 
  1997/04/17 小川のセクシーショット
 
今日はスタッフの皆んなと飲み会。その後編集室に流れ込み、編集を開始する。しかし、小川はダッシュで寝てしまったので、バツとしてあられもない寝姿を写真に撮る。 (近いうちに公開されると思うので笑ってやってください) <編集状況> S-94の途中で終了。あと6シーンとちょっとだ。明日も頑張ろう。
 
  1997/04/10 田中友幸氏の死去
 
新井です。しばらくお休みしてしまい、申し訳ありませんでした。日本を代表するプロデューサー、田中友幸氏が亡くなってしまい、その余波を受けて、しばらく編集が出来ませんでした。ようやく騒ぎも収まってきたので、日誌を再開しようと思います。よろしくお願いします。 (清水は今だに大変そうです。なんせ、会社の上司ですから) <編集状況> さて製作の進み具合ですが、今週末で編集とタイトル撮りを終わらせる予定でいます。その後は編集のタイミング調整と音響作業に入ります。いつもは自分が書いた製作日誌を載せているのですが、今回は間が空きすぎたので、自分でコンピューターに打ち込んでみました。なんだか手紙みたいでこっぱずかしいですね。それでは、また。
 
  1997/04/01 舞台設定について
 
太平洋側にある港街。それがこの物語の舞台です。丘の上の高校からは輝く水平線と緑の島々が見え、裏側は山に囲まれており、小道と坂道からなる昔ながらの住宅街に通じています。ここにヒロコが住んでいます。そして、街の向こう、山のふもとから先は最近開発が始まったニュータウンが広がっています。アキラはこのニュータウンから自転車で通っています。旧住宅街とニュータウンを分ける幹線沿いには商店街があり、タカシの家はここでカメラ屋を営んでいます。また、サチコの家は高校の反対側の街外れにあり、近くには僕たちがジャングルと呼ぶラスト近くに出てくる丘があります。海沿いを走る定期バスは一日一本。電車は単線で一日三本。誰もが思い描く日本の原風景。一種、時間が止まっているかのような錯覚を思い起こさせる街。それが、この物語の舞台であり、アキラやヒロコを始めとする登場人物達は、この街の中で今日も元気に走り回っているのです。 <編集状況> 今日は事情があって、編集出来ず。
 
  1997/03/31 後輩の芝居
 
今日は、後輩の芝居を見に行く。これがまた、シュールなショート・ショートで、こういうのが一番批評しにくい。即座に面白いといえる作品もあれば、家に帰って、咀嚼して、飲み込んで、 反芻して、消化して、やっと感想が言える作品もある。今日のは明らかに後者だ。「面白かったですか?」と聞かれるのではないかとドキドキしながら帰ってきてしまった。でも、この作品を見て、2つアイデアが浮かんだ。ラッキー!家に帰り、身支度をしてから編集所に行くも、2カットで力尽きてしまう。S−92は演技の流れを止めないように長回しで撮影したため、編集点が判りにくい。さらに、ヒロコはほとんど後ろ向きで口が見えないのだ。でも、がんばって明日中には終わらせよう。
 
  1997/03/30 テーマは「青い空、白い雲」
 
快晴。外は花見の季節だが、編集室の中は夏である。この作品が終わるまで、僕たちの夏は続く。この作品の季節は夏、テーマは「青い空、白い雲」なのだ。果たして、僕たちの夏に終わりは来るのだろうか。今日は朝10時から夜中の1時まで編集。ずっと胡座をかいていたので足が痛い。今日中に編集を終らすつもりだったが、S−91で断念する。しかし、100シーン中91シーンだから、これで91%終わった。これから家に帰る。今村、清水、編集助手お疲れ様。応援に来た他のスタッフ、ありがとう。さあ、明日もがんばろう。
 
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